|
|
|
|
大吟醸を搾る。
もろみで満たした酒袋を幾つも吊るす。酒袋の底の方からゆるゆると滴り落ちてくる酒の雫。決して急いではいけない。やがて雫は己の意のままに流れを作り、静かに、ゆっくりと、ガラスの斗瓶へ落ちてゆく。想像してみてほしい。静寂の一室に小さく響く、酒の清らかな流れの音、大吟のささやき。一仕事を終えた蔵人にとって、まさに至福の音と言えるだろう。
良い酒を醸したいと思う。
そのために私たちは米作りから手掛ける。ひたすら田んぼと付き合う夏を終えて、秋。収穫の喜びは酒造りの喜びでもある。自分たちが育てた米で酒を仕込む。麹造り、酒母、そしてもろみ…。酒は生きているから、人の時間に合わせようとしてはならない。毎年の造りで積み重ねた経験や成果が、酒造りには必要な手間と時間を惜しまないことが肝要だと教えてくれた。
|
|
|
杜氏は言う。「良い酒を醸すのに大切なのは「和」です。そして蔵人が健康であること」。当たり前のことをおろそかにしない。その魂は、酒に宿る。
|
|
今、斗瓶に光る新酒は生まれたばかり。酒造りはまだ終わっていない。春に搾った酒は芳醇な香りをそのままに、じっと飲み頃になるのを待つ。米のまろやかな味わいと、きれいな香りを裏切るかのような力強さを極めた酒。飲み手の手元に届き、その喉を幸せに震わせる時、私たちの酒づくりは、一つの完成をみる。
|
|